中学入試算数の先取り学習の是非

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算数全般
英才教育

5年生でカリキュラムを終わらせると有利?

大学入試は、私学の中高一貫校の実績が良いです。

私学の中高一貫校は、高校2年生までには、高校3年生の内容まで学習し、ラスト1年間は大学入試に向けての学習をしていると思います。

その影響がどれくらい強いのか分かりませんが、必勝パターンのように聞こえます。


そもそも公立中学、公立高校に行くと、理科、社会で同じような内容が中学、高校でダブってしまい、無駄と言われています。

また、義務教育の中学はユルすぎて、高校はキツすぎて、科目によってはセンターの内容が終わらないとも聞きます。

大学受験を考えた場合は、公立あがりはどう考えても不利で、私学の優位性を感じます。


その考え方を中学受験にあてはめるとどうでしょう?

サピックスは5年生の1月で全カリキュラム修了となっていますが、実はそうではありません。 立体の切断や、各単元のやや難しめの重要な問題は5年生の間には扱いません。


6年生の1学期と夏期講習でそういう問題を扱うので、実質は6年夏でカリキュラム修了です。

それに気づかなかったのか、四谷大塚はカリキュラムを早めて、サピックスとは段違いのハードな教材となっています。

とは言いましても、立体の切断などは6年に持って行っています。

サピックスと四谷大塚の違いは、各単元の難しめの問題に5年生で触れるかどうかと言って良いです。


保護者の中には、サピックスは5年生で全単元を修了し、6年生からは実戦演習と思われている方もいることでしょう。

サピックスの合格実績が高いことから、サピックスに通われていなくても、5年生でカリキュラム修了のスタイルが難関校対策にはベストと思われているかもしれません。

あるいは、その勢い余って、もっと早く全単元を終了して、実戦演習を早めに始めた方が良いと考えられている方もいると思います。

実際のところは、6年生の9月から実戦演習が始められれば十分のような気がいたします。


公立小学校なら先取り学習も容易かと思いますが、中学受験塾では、すでに進度が速く、深度も奥深いため、これ以上の先取り学習は、背伸びのしすぎや表面上をなぞるだけの学習になってしまうことも懸念材料になります。



飛び級

私がサピックス勤務時代に学年を1つ鯖を読んでいたお子様がいました。

狙い通り開成中に合格しました。


小学3年生(小2の2月)で、新小4の授業を始めると、ひと学年先の学習になります。

いわゆる飛び級です。

サピックスを始め、多くの塾では飛び級は認めていないと思います。

表向きの理由はいろいろありますが、真の理由は「塾の秩序を守る」「混乱を防ぐ」ためだと思います。


でも、飛び級などの先取り学習が受験に有効ならば実行したいというのが保護者様の本音だと思います。

今回は飛び級や先取り学習が本当に有利なのかを考えていきたいと思います。


世界で戦うアスリートたちが、その種目をいつから始めたのか少し調べてみました。


浅田真央…3歳(バレエ)

内村航平…3歳

吉田沙保里…3歳

羽生結弦…4歳

錦織圭…5歳

北島康介…5歳

石川佳純…小学1年生

澤穂希…小学2年生

イチロー…小学3年生

高橋尚子…中学生


これを見ると、3歳ころから始めている選手が多いですね。

親の影響で始めて、脈があったからそのまま本格的にのめり込んだというストーリーが多いようです。


勉強とスポーツが、すべて同じというわけではありませんが、勉強も脈があったら早めに始めて先取りをした方が良いと感じるかもしれません。

しかし、成功者だけ見てもどうかと思います。


  1. 先取り学習をして超難関校に受かった子
  2. 先取り学習をして中堅校に受かった子
  3. 先取り学習をしたのに途中で挫折した子


どのパターンもあるはずです。

超難関校に受かるお子様のポテンシャルなら先取り学習の試練も乗り越えられると考えることもできるかもしれません。

このように書きましたのは、小4から受験勉強を始めたお子様や小5から始めたお子様の中で、天才と呼びたくなる将来有望と思える優秀な生徒を何人か見てきたからです。

入塾して1ヶ月くらいで頭角を現し、半年もしないうちにトップの座に登り詰めます。


そういう姿を見ると、先取り学習や飛び級は有効なのか疑いたくなってしまいます。

そもそも先取り学習や飛び級の目指すところは何なのでしょうか?


あくまでもイメージで偏差値を使いますが、


偏差値70の子どもを、偏差値70を維持する

偏差値65の子どもを、偏差値70に引き上げる

偏差値60の子どもを、偏差値65に引き上げる

偏差値55の子どもを、偏差値60に引き上げる


このあたりだと思います。

1は、上記のように先取りをしなくても大丈夫だと経験上判断できます。

3や4は、程度にもよりますが、先取りの負荷がきついかもしれません。


2はどうなのでしょう。

こればかりはなんとも言いようがありません。

首都圏の話にしますと、難関校の合格実績がぐんぐん伸びている塾はありません。

ぐんぐんとはまでは行かなくても緩やかに伸びている塾はあります。

サピックス生のダブルスクール生、つまりお裾分けしてもらってなくても伸びている塾はあります。

しかし、先取り学習で偏差値を5上げられるならば、もっと勢いよく上がるはずです。



月並みですが、先取り学習は慎重に

次は、少し視点を変えてみます。

野球で考えます。

小学生の少年野球は「軟式野球」とリトルリーグの「硬式野球」があります(軟式ボールを使用するか硬式ボールを使用するかのちがいです)。

いずれもグラウンドはプロ野球にくらべて狭いですが、リトルリーグはプロ野球で使うボールと同じです。


イメージとしてはリトルリーグは先取り学習と似ています。

プロ野球選手を目指すなら、早くからプロ野球と同じボールを使おうということですので。

少し調べてみましたら、プロ野球選手のうち、リトルリーグ出身者の割合は6~10%くらいらしいです。

それが多いか少ないかの話はここでは触れません。


先取り学習に近いとは言え、ボールは同じであっても、マウンドからホームまでの距離が短い、球数制限、変化球を多投しないなど、プロ野球選手と同じことをしているわけではありません。

きちんと段階を踏んでいます。

大人の筋力ではないので、無理はできないという考え方だと思います。


算数で考えてみると、小4の特殊算から解き方を身につける勉強になり、小5の割合と比から抽象的な勉強になります。


小4の算数から明治時代で、小5の算数から戦後の高度経済成長時代くらい劇的に変わります。 次の段階に進むときは、プロ野球選手とリトルリーグの子ども達の体力差のように慎重に考えても良いのではないかと思います。


進学塾によっては、割合と比を早くから導入する塾もあります。

私は、そういう塾では働けないと思います。

講師によって考え方のちがいがあり、明治とか戦後のような段階分けをしていない講師もいることでしょう。

いまの慎重論はあくまでも個人的な見解です。



具体的な先取り学習の方法

ここで、算数教材塾・探求としての先取り学習の理想型の一例を提案いたします。

決して先取り学習を推奨しているわけではなく、効果は不明という立場です。


もし先取りをしても、逆効果にはならないことを主眼においています。


小学3年生まで

小学3年生までの内容は早めに終わらせて良い

塾の小4内容は焦らずゆっくりやる

余裕があったら算数パズル、囲碁、将棋など覚える勉強でないものに力を入れる


小学4年生

塾の小4の内容を完璧に仕上げる

塾の小5の内容に行きたくても、小4の内容を完璧にすることを優先する


小学5年生

塾の小5、6の内容を一気にやっても良い


スポーツでも、体操系は幼い体の柔らかいうちにしっかり取り組んだ方が芽が出ると思いますが、砲丸投げなどはまさか3歳児などはやらないでしょう。

算数もそれに近いような気がします。

「覚えること」「抽象的なこと」を脳が受け入れられる時期があると思います。


私のイメージで恐縮ですが「5~7歳」「11歳~」が伸びる時期で、「8~10歳」ころはあまり伸びていないのではないかと思います。

伸びる時期には進め、8~10歳はあまり進めない方が良いような気がします。

個人差があるので、全員それにあてはまるわけではありませんが、頭の片隅に残してくだされば幸いです。