速さを得意にする

query_builder 2021/05/07
算数全般
走る

速さは流行廃りなく中学入試の花形です。

速さを制するものは受験を制するとまで言って大袈裟ですが、立体図形の難問は勉強していけば比較的克服しやすく、数の性質や場合の数の難問は克服しにくいので差がつきにくいです。


速さの難問は克服しやすさが絶妙なので、マスターできている人からできていない人まで受験に挑むことでしょう。

そのような特性から、中学入試の問題を作成する立場に立つと、速さで差をつけようという意識が強くなるのでしょう。

また、速さの問題文は条件が多く、その料理の仕方にセンスが必要なので、大学受験に通じるのかもしれません。


前述の通り、速さの難問は勉強の仕方によって出来るようになります。

逆に言えば勉強の仕方によっては出来るようになりません。

やれば必ずできるわけではないので厄介なのですが、出来るようになる方法はあります。

方法というより、問題の捉え方の巧みさ、コツを習得することです。

そのコツを身につけて演習して難問に強くなって欲しいと思います。


今回のブログは速さの難問を1問、例題として提示して、「どう読み解いていくのか」「どういう力が必要か」など、問題に向かったときの心構えを書いていきます。


私の本職は算数の解説作成で、どうやったら「苦手克服で得意になる」「思考力がつく」「応用力がつく」ということを常に考え、それを解説作成に反映させていくことを得意にしています。

分かりやすい解説、見やすい解説は当然のことで、初見の問題に取り組むときに対応できる力をつけられる解説書を目指しています。


今回の速さの問題に対しての接し方をご覧いただくと、解説書作成の狙い、算数教材塾・探求のバックボーンがお分かりになるかもしれません。


では、蘊蓄はこれくらいにして例題です。


A、B、CはPQ間を1往復する
A、BはPを、CはQを同時出発
出発20分後にAとC、その10分後にBとCが出会う
AとCが2回目に出会ってから24分後にCは戻る
AとBが出会うのは□分後


問題文は5行問題ですが、簡単ではありません。

この問題の書き方はサピックスの黒板授業のようですが、いまのサピックスはプリント授業で、このような書き方はあまりされていないと思います。

それでも黒板授業と広告に載せ続けているのはどうしてなのでしょう。

黒板授業風の問題の書き方の利点は、条件が1つ1つ独立して見やすいことにあります。

この問題なら5行目は条件ではないので、条件は5つです(3行目に条件が2つあるから)。


まず、問題文をサッと読んで、2回出会う問題だと判断します。

これは容易です。

しかし、3人いるのが厄介です。

厄介なことは無理をしないことにします。

これが算数が不得意な人が苦手にする行為です。

自信がないと捨てる勇気を持ちにくいのだと思います。


3人いるから厄介なので1人見ないことにして2人だけに注目します。

どの2人にするかを間違えると解けないか解きにくくなりますが、やり直しは可能です。


この問題なら、Bは見ないことにしてAとCに注目します。

AとCと書いていあるのが2回あるからです。

この判断は大抵の生徒さんはできると思います。


AとCは出発して20分後に初めて出会い、2回出会うとあるので、AとCの速さの比の値は2未満です。

簡単に言うと2倍以上の速さではないということです。

これを無視して考えていく生徒さんは多いですが、それは仕方のないことだと思います。


比の値が2未満の場合、 「出発~1回目の出会い」「1回目~2回目の出会い」「出発~2回目の出会い」の時間の比は1:2:3になります(私はこれを己算と呼んでいます)。

時間の比が1:2:3なので、2人の進んだ距離の和も、それぞれが進んだ距離も1:2:3になります。

2回出会う問題はこの比を利用します。


問題によっては1:2だったり、1:3だったりしますが、必ず利用するんだと決めつけてかかる必要があります。

これをテクニックとか知識とか言いますが、人によっては裏技と言います。


このテクニックを使いたいと念じ続けると、AとCが2回目に出会う時間は20×3=60分となります。


いま求めたものを使って次に進んでいくのは算数の鉄則です。

行き止まったら、車線変更の必要はありますが、行けるだけ行きます。

2回目に出会ってから24分でCは戻るので、Cは出発してから60+24=84分後に戻ったことになります。

Cの片道は84÷2=42分まで分かります。


まだまだ行き止まりではありません。

そして、まだBも使いません。

Cは出発して20分でAと出会い、

それから22分で折り返します。

距離の比が20:22=10:11になるので、それがCとAの速さの比です。

これは速さのよく使う解法パターンです。

これを自在に使えないと速さの難問克服は不可能でしょう。


さらに10:11を使っていってもいいのですが、ここで、いまのと同様の手段でBの速さの比も分かるので、それを求めておいた方が無駄がありません。

こういう細かいところは受験生には求めません。

直接指導の場合は、「そろそろBのことを気にしたくなる季節だね」なんて感じで、突然、気がついたフリをします。


Cは出発して30分でBと出会い、それから12分で折り返します。

距離の比が30:12=5:2になるので、それがCとBの速さの比です。


すると、A、B、Cの速さの比が11:4:10と分かります。

ここまで分かってしまうとなんでもできるので、ようやく設問を見るということでも良いです。


糸口が分からない場合は、設問を見てそれに沿って考えることも必要ですが、正しく考えられれば、設問は見なくても間違えた方向には進みません。

設問を強く意識しすぎの場合は少しほぐしてあげたいです。


AとBの出会った時間を求めたいので、ここからはCは不要ですが、PQ間の距離は求めておきたいです。

Cは片道42分と分かっているので、それを使ったらCはお役御免です。

Cの速さが10で、片道42分なので、PQ間を420とします。


A、B、Cの分速を11、4、10としています。 Aが折り返してBと出会う時間なので、AとBの進んだ距離の和が420×2=840になります。

この部分だけ見れば超基礎です。

840÷(11+4)=56分後が答えです。


恐らく、このレベルの問題なら正答率はかなり低いです。


  • AとCだけ見る!
  • 2回出会う問題は1:2か1:3を使う!
  • 60分を使って何ができるか考える!
  • 片道42分を使いたい!
  • CとAが出会うまで20分、それから22分で折り返しだから速さの比が分かる!


解き方を理解して身につけるのではなく、こういう意識で問題に接することができたら、このような難問もなんとかなりそうではないでしょうか?


そろそろまとめのころですが、いよいよ重要なことを書きます。

このブログで私の教え方が優れていると自慢しているわけではありません。

ほとんどの塾講師はこのくらいのことは授業中に伝えています。

もっと分かりやすく、ていねいに、面白く教えているかもしれません。

しかし、授業中にそれが身についていないことが問題なのです。


好きなアーティストのライブなど見に行くと、興奮して素晴らしかったとなりますが、1曲1曲落ち着いてじっくり聴いているわけではないので、凄かった!感動した!というように大雑把にとらえがちです。


それと同じようなことで、聴いて感動するだけではなく、自分のものにしようとするのなら書物をしっかり読みこなしていく方が上です。

速さの問題の捉え方を重視した解説で、速さの難問を得意にし、アドバンテージを持って受験に臨んで欲しいと思います。