いろいろな問題を解くと力がつくのか?

query_builder 2015/07/29
算数全般
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今回のブログは、かなり個人的見解で、斬新な意見だと思いますが、参考になる部分が少しでもございましたら幸いです。

中学入試の算数のカリキュラムは8月に終わるのが一般的です。



「サピックスは5年生の1月で終わります!」と思われた方もいるかもしれませんが、サピックスも6年生の8月に終わりです。

螺旋階段形式になっていて、5年生の間は難しめの問題は扱わずひととおり全単元が登場しただけです。


そして6年生の9月から総合演習と称していろいろな問題を学習することになります。

単元別の学習が中心となる塾と、単元を定めずにテスト形式の学習が中心となる塾に分かれると思います。

どちらにも一理あり、どちらが正解ということもありません。

前職の上司は年がら年中「入試の戦い方」と言っていて総合演習主義で、それだけならいいのですが、単元別派を排除する強引さはちょっと問題ありだったと思います。


6年生の8月まで各単元を身につけて、9月からいろいろな問題を解きます。

その類題が入試に出たら合格に近づくと思われる方が多いでしょう。

言いかえると、入試問題に出る問題を1回は経験しておきたいから、演習をたくさんやった方がいいと思われている方が多いことでしょう。



中学入試当日に、大抵、国語講師が「この問題やったことある!」と叫びます。

入試を終えた受験生が「やったことあった!」とニコニコして話す姿もよく見かけます。

私がまだ右も左も分からないころは、ボーダー近辺にいる子がそういうことを言うと「よしっ!受かった!」 と思ったものですが、蓋を開けてみると、そのような結果にならないことが多かったです。


志望校対策を売りにしている塾でも当たった当たったと賑やかですが、ボーダー付近の子まで軒並み合格が出ているかと言えば、そうではないと思います。

合不合での合格判定50%の子たちの合格率がどのくらいになっているか公表してくれても良いものですが…


つまり、1回やったことがある問題が数問出た程度では合格点に行かないということでしょう。

正しく言うと、


  • 太郎君はA問題を経験していたけどB問題は経験していない
  • 次郎君はA問題を経験していないけどB問題は経験している


という状況では、お互いに「やったことある!」と言いますが、これでは合格かどうかは分かりませんね。

みんなやったことがあるわけですから。


しかし、実際はやったかやっていないかということよりも、やったことがあると思った問題がそもそも正解になっているのかが問題です。

1回経験した問題がどうしてできることになるのでしょう?

入試報告会などのイベントで、塾の弁士は「あれは○○講座でやった」と言いますが、やったとできるは雲泥の差があります。


カリキュラムテストで毎回たいして復習もしていない子が満点連発なら、その子は1回経験した問題は必ずできるという評価を与えてよいでしょう。

でも、ほとんどのお子様は何回も復習しながら、テストでもできないということをくり返していませんでしたか?

1回経験したくらいでできるようになれば、算数講師は楽すぎますし、受験勉強も5年生の9月スタートくらいでも良いと思います。



つまり、6年生の9月からできるだけ多くの問題に触れたいというのは、1回やればしっかり身につくことが前提でのことです。



○○ダイエットのように、心の隙間をついたもので、一見、理論に基づいたようで、実は効果の上がらない方法なのです。

その頃になると、受験予定の過去問を解き始めますが、いろいろな問題の経験はその程度で十分です。

たくさん経験しても、それが生きないからです。

それでも、初めての問題を考える練習は必須なので、いろいろな問題を解かなくていいわけではありません。

過去問くらいでちょうど良い分量というわけです。


ときどき入試問題を「何回もくり返せ!」というアドバイスをする人がいますが、どういう目的か分かりません。


  • 1回出た問題は出ないから過去問をすべて解けるようにしても意味がない
  • 入試問題は学校からのメッセージだから何年も前に出た問題の焼き直しが出題されることがあるから過去問を解けるようにすることに意味がある


こんなことを言って、くり返しの是非が語られますが、入試問題は「いろいろな問題を解くという経験」のためなので、そんなにしっかりやる必要はありません。


初見の問題を見て、いままでの典型題に結びつける練習ができれば目的達成です。

「できたらガッツポーズ」「できなくて悔しくて机を叩く」

それだけで十分だと思います。



弱点単元が発見されたら対処することは、これとは別の話です。

十分な経験もするにこしたことはありませんが、それよりも典型題の習熟度が低い方が問題です。

例えば、速さで、3回以上出会う問題はダイヤグラムをかくのが鉄則です。

ダイヤグラムをかいたら80%の確率で相似を使います。

そういう説明を何回か聞いているはずですが、それがマスターできていなければ、大きなハンディです。

入試問題を見て「3回出会う問題はやったことがある!」「さて、どんな図をかいたら良いだろう?」

これでは得点を手堅く取っていくことが難しいでしょう。


いろいろな経験よりも典型題をがっちり固めた方が受かりやすいという所以です。


初見の問題に接するとき、


  1. まず、問題を見て、典型題か否かを見抜きます。
  2. 典型題なら解けます(マスターできていたら)。
  3. 典型題ではない場合は「本質はいままで経験しているものかな?」と探します。
  4. そうでない場合は「作業してみる」「表にまとめる」「2つの条件を見くらべる」などの方針で進める


3のときにいままで経験したことあると気がつかなくても、4で正しい手順で考えて行く間に、いままでの経験が呼び起こされて答えまでの道筋が鮮明になるかもしれません。

4のときに、最後まで、経験したことがない問題と思っていても、正しい手順で進んでいけば、解ける可能性が高いです。


3よりも4が重要ということになります。

経験が生きるよりも、正しい手順で解くことが大切になります。


正しい手順は、前述しましたが、3回出会う問題はダイヤグラムをかいて相似を使うことが多いと知っているなどです。


もう少し良い例を挙げてみます。

またしてもダイヤグラムの問題にします。


流水算や峠の上り下りで、反対方向から同時に出発して、お互いに1往復して同時に戻るという問題があります。


これは、ダイヤグラムをかいて点対称を利用します。

こういう経験があったら、すぐにダイヤグラムをかいて点対称を利用して解けることでしょう。


経験がない場合は、上りと下りの速さが異なり、往復するという時点で、ダイヤグラムを選択します。

ダイヤグラムをかいたら、図形の性質を柔軟に利用する姿勢が持っていることが大切です。

図形の移動や点の移動で点対称を利用する経験があったら、それをダイヤグラムに適用させて、経験無しでも、初見の問題が解けることになります。


重要なのは赤字で書いた部分です。

こういうときは、こういうことをすることが多いというファジーな概念をどれだけ持っているかです。


典型題を身につける過程で、このファジーな概念を築くことができたかです。

それができていれば、たくさんの経験をしなくても初見の問題に対応できるということです。


褒められる話ではありませんが、典型題が身についていなくてもその場で自己流に考えて解ける子がいます。

そういうタイプが、脅威の潜在能力と言われ、入試で活躍していきます。


そろそろまとめます。

9月から入試までの学習の優先順位を付けていきます



  1. 典型題を固めることが最優先
  2. いろいろな問題に触れるのは過去問で十分で、そういう問題は復習の必要性があまりない(学校によります)
  3. 考える力を習慣をつけられるように、1日1問ていねいに考える練習をする(問題選択が難しい)
  4. 余力があったら経験を増やすように非典型題の良質な問題を解き、解けないときは、解説をサラッと読んで理解する


いま挙げたものに反する勉強をしている子が多いと思います。

過去問をくり返したり、典型題ばかりの問題集を取り組んだり、解説を見て唸っていたり…



正しい勉強をすれば、猛追、大逆転の可能性が高まります。



上記のように、3回出会う問題はダイヤグラムで、相似を使うのが鉄則ですが、その鉄則を知らない場合は典型題を固めたつもりでも固まったことになりません。

典型題は解けるだけではダメなのです。



鉄則を理解することと、ファジーな概念を身につけられるかです。

どういうときにそれを使うと有効で、どういうときにそれを使ったらダメなのかを理解することです。

このようなことまで深く理解して、類題に活用することができます。

そして、この状態になって典型題をマスターしたといいます。

典型題をマスターできていないお子様には、そういう鉄則がしっかり記述されている対話式算数をお薦めいたします。